みんなの脳神経内科 Ver.2
著 山本大介
中外医学社
脳神経内科を、臨床研修医、内科専攻医をはじめ、プライマリケア領域に関わる全ての医師に役立てるよう、実用的な内容を平易な言葉で記載しています。すべての臨床医に役立てるよう、「みんなの脳神経内科」をタイトルにしました。
2021年に初版、2024年に改訂第二版が出版されています。
重要疾患について、臨床で使える知識を学べます。
脳梗塞、認知症、神経診察、MRIプレゼンテーション、てんかん、しびれ感、髄膜炎、脳炎、片頭痛、パーキンソン病について、レジデントに、プライマリケア医に役立つ実践的内容を網羅しています。
本書について
著者の想い。そして、本書で学んでそれをまたシェアしてください!
著者の想い (中外医学社刊 みんなの脳神経内科 初版 まえがきより)
私は悩める臨床医の一人です。大学医局には属さず、市中病院で臨床研修と専門医研修を終え、現在は専門医として日々診療を行っています。市中総合病院のいち脳神経内科医として、患者さんの治療方針で悩んだり、患者さんや家族との感情的な問題で悩んだり、自分の家庭の事で悩んだり、アカデミックな活動について悩んだりしながら、日々を過ごしています。どんな仕事をしたいのか?どんな仕事をすべきなのか?臨床だけでいいのか?アカデミック活動はしないといけないのか?それら問いについても、もやもやする感情はいつまでたっても晴れることはありません。
この感情は、いずれの医師の心にも程度の問題はあれ、ある程度住みついている感情であると思います。様々な分野で、他の「一流な」誰かが活躍している様をみて、「それは自分とは違う、比べるものではない」、とは、頭では、理屈では理解しながらも、それを全く無視して処理できるほどに、自分の「本当に大切なこと」「本当にやりたいこと」を整理して、自分の仕事の中で実践できているわけではありません。
そんな中で、それでも私は臨床医としていい仕事がしたい。という想いで日々臨床に携わってきました。一方、脳神経内科の臨床以外の仕事では、前職の聖隷浜松病院、現職の湘南鎌倉総合病院で、臨床研修医・内科専攻医の教育の仕事も続けてきました。もやもやした感情の私ではありましたが、「教育」の仕事は、どうやら比較的しっくりくるものでした。「教育」に関わる仕事は、私の仕事の中で「楽しい」と思えましたし、「これには意味があって、誰か(若い先生たち)に喜んでもらえて、実際に誰か(医師・患者・病院)の役にも立ついいものだ」と、素直に腑に落ちてくるものでした。少しずつ、教育で誰かに貢献できることにやりがいを感じるようになってきました。また現実的に、ここまで勤務してきたようなtraining hospitalにおいて、教育を通じてどのように若い医師に魅力ある病院として支持してもらい、病院を盛り上げていくのか?というテーマは、病院にとっても非常に重要なテーマである、とも認識するようになりました。
さて、本書についてです。ここまでずっと、「一流」とは程遠い、「三軍」な医者として自分の仕事の在り方にも、もやもや悩みながらやってきました。しかしながら、むしろそんな自分にしか書けないような、教育のためのテキストを書こう。という想いで本書をまとめさせていただきました。誰かからレクチャーを受けるとき、実際の「臨床の生々しい情報」を得られることが私自身一番、嬉しいです。「三軍」脳神経内科医だからこそ発信できる、生々しい言葉で語られるテキストは、私らしい仕事だろうと考えました。本書の内容は、脳神経内科臨床の基本的内容であり、特段特別な内容でもありません。それらをわかりやすく、レジデントや非専門医の先生にも役に立つ内容として伝えられたらと考え、「みんなの脳神経内科」と、タイトルをつけています。書いてみると、執筆活動はかなり苦痛でそこまで楽しいものではありませんでした。しかしながら、ここまで述べてきたように、「こんな自分でも、教育を通じて、誰かのためになる価値のある仕事がしたい」という願いが、執筆を続けられた原動力であったと思います。
本書の内容について、プレゼンテーションスライドが公開されています。
本書の内容のプレゼンテーション資料はオンライン(Antaa slide)で公開されています。本書で勉強していただき、自由にスライドを活用していただきながら、また他の誰かにも本書の教育をシェアしていただけるならこんなに嬉しいことはありません。
改訂第2版 まえがき
本著を手に取って頂きまして、誠にありがとうございます。「みんなの脳神経内科」は2021年に初版が刊行され、この度2024年に改訂させていただくこととなりました。
常々、医療における情報の「賞味期限」のようなものについて考えます。かなりの労力と時間をかけて、かつ著者の想いがこめられて書かれた論文や著作に私たちは日々出会います。それらは私たちに尊い価値を与えてくれる一方で、過ぎていく時間とともに大量の情報の中で世界に埋もれていってしまいます。これは至極当然の道理ではありますが、その事実には「切なさ」や「もったいなさ」を感じます。医学におけるその価値の普遍性を感じながらも、総じてはその存在は消費されながら、薄まっていくものだと理解します。もちろん、本著もその道理にあらがうことはできません。
また、初版で本著は「三軍著者によって書かれていることに価値がある」と図々しく述べました。今でもその気持ちには変わりありません。あえて私は、私自身にも・本著にも、「matureでない」こと自体に特別な意味を見出せるはずだと主張させていただきました。しかしながら、本音ではそれは詭弁です。本音では言い訳もなしに、私も著作自体もできるだけmatureでありたい、と願わないはずはありません。
著作が時間で消費されてなくなる切なさと、それ自体がmatureでないことの不全感。このモヤモヤをどうすればよいか、と考えるわけです。その思考の結果、自分が成長した分だけ本著も成長させて、少しずつでもmatureにし続けることでこの本を生き続けさせることができないだろうか、という考えに至りました。日々患者さんから教えていただきながら、臨床家として繰り返し続け、少しずつ、よりよく変えていく「日々の実践する医療」を、前向きな形で成長させ続けることの体現として、私はこの本を成長させ続けたいのです。ですから、図太くしぶとく、よりよい書籍としてこの本を改訂し続けることが私の願いであります。改訂に際しては、初版から時代に合うように加筆し、また新たに2章を加えました。いつか、どこかに真のmatureがあるなら、それを目指しながら続く、本著でありたいです。そして、初心は忘れず、いつまでも三軍だからこそ表現できる「みんなの」「脳神経内科」を体現していきたいと考えています。改めまして、どうぞお付き合いよろしくお願い致します。
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